Q1.DBSの適応にならないのはどんな時ですか?

DBSはすべてのパーキンソン病患者さんに適応になるわけではありません。最も重要なことはパーキンソン病でありレボドパに対する反応が良好なことです。その他のパーキンソン症候群(多系統萎縮症や進行性核上性麻痺)には効果が期待できないのでDBSは行いません。その他、一定の認知機能低下を認める患者さんや薬剤性でない精神症状の強い患者さんも適応となりません。私どもではこれらの点について詳細な評価を行って適応を判断しています。DBSが適応外となっても、レボドパカルビドパ持続経腸投与療法(デュオドーパ)のようなその他の治療オプションもありますのでその場合には提案します。



Q2.DBSの効果はどれくらい続くのでしょうか?

残念ながら薬でもDBSでもパーキンソン病の進行を止めることはできません。またすべての症状を改善できるわけでもありません。運動症状の中でも振戦、固縮、無動症状に対してDBSは特に有効でその効果は5年以上の長期にわたっても有効です。病気の進行によって多少は悪くなってもDBSを行わなかった場合に比べれば格段に良い状態が維持できます。一方、体軸症状(声、嚥下、身体のバランスなど)はDBSや薬が効きにくい症状が長期的には目立つようになります。この点については今後の課題です。



Q3.DBSの刺激をする部位がいろいろあるそうですが?

DBSはパーキンソン病以外の神経疾患の治療としても行われており、疾患の病態によって電極を入れる部位(刺激する部位)が異なります。一般にパーキンソン病の全般的な運動症状の改善に有効な刺激部位は、視床下核(STN)あるいは淡蒼球内節(GPi)と呼ばれる脳の深部の構造物です。STNは振戦、固縮、無動に対する効果が高く、薬を大幅に減量することができ、その結果間接的にジスキネジアも改善します。一方GPiは無動に対する効果はSTNより劣り薬の減量もできませんが、ジスキネジアやジストニアに対する直接的な効果が高いことが特徴です。実際には患者さんの症状などを考慮して患者さんごとに刺激部位を決めていますが、現在世界で主流として行われているのはSTN DBSで、順天堂でも95%程度の患者さんでSTNが選択されています。



Q4.手術でフレームを装着するところがすごく痛いと聞いたのですが

DBS手術にあたっては最初に定位脳手術フレームを装着する必要があります。このフレームが術中に動かないように、左右対称に強固に装着する必要があります。実際には一時的に耳の奥の骨で支えながら頭蓋骨までとどくピンを打ち込むのですが、耳の奥は局所麻酔が効かないのでそのまま行えば当然激しい痛みがあります。当院ではこの部分では局所麻酔に一時的に静脈麻酔を併用して患者さんが完全に寝ている状態で装着していますので痛みは全くありません。



Q5.DBSを導入するのに適切な時期は

以前DBSは薬物療法をとことん行った上での最後の手段と考えられていました。しかし、最近ヨーロッパで行われた臨床試験ではウェアリングオフが出始めて間もない比較的早期の患者さんでも早めにDBSを導入した方がその後の経過が良かったという結果が報告されました。実際にはDBSの適応時期については患者さんの就業状況なども考慮して柔軟に判断すべきです。つまり仕事を持っているような患者さんならば早期でそれほど症状が重くなくても積極的にDBSを導入して仕事を継続できるようにすることが重要です。また仕事をしていない患者さんであれば日常生活で何らかの介助が必要になってきたときが導入のめやすになると思われます。



Q6.DBSにかかる医療費については

パーキンソン病に対するDBSは本邦で保険適用になっている治療法です。難病医療費助成を受けている患者さんはDBSについても適用されます。またそうでない患者さんについては高額療養費制度が適用されます。



Q7.その他の疾患に対するDBSの適応はありますか?

DBSはパーキンソン病以外にも全身性ジストニア、本態性振戦などの難治性振戦、その他の不随意運動症に対しても有効な治療法とされており、保険適用にもなっていますのでご相談下さい。



Q8.DBSを行って、将来iPS細胞による細胞移植療法も可能ですか?

現在京都大学でパーキンソン病に対するiPS細胞による細胞移植療法の臨床試験が行われており、その成果に対して大きな期待を抱いている患者さんも多いと思います。しかし臨床試験の結果が明らかになり実際の臨床応用が行われるのはまだ数年先になると思われます。この場合、すでにDBSが行われていてもiPS細胞による細胞移植療法を行うことはもちろん可能で、場合によってはその時にDBS装置を取り外すこともできます。