運動障害ユニットについて

学際的DBS治療専門チーム

順天堂ではパーキンソン病患者さんに対するDBSの適応評価、実施については、脳神経内科、脳神経外科、精神科、リハビリテーション、薬剤師、看護師からなる専門チーム(運動障害ユニット)で治療にあたっています。

運動障害ユニットでは、パーキンソン病などの運動障害疾患に対して内科,外科を含めた集学的な治療・研究を行うとともに運動障害疾患に対する臨床・研究の教育的センターになることを目的として2012年に設立されました。

順天堂のDBSチームはメドトロニック社よりアジアで唯一のDBSトレーニングセンターに認定されており、国内外より多くの医師がDBSの研修に訪れています。




DBS治療の流れ

DBSはすべてのパーキンソン病患者さんにメリットがある治療とは言えません。
したがって患者さんがDBSを希望されたり主治医の先生から勧められて紹介された場合にはまずDBS が本当に有用かどうかの評価を行います。

実際には1週間程度の検査入院をしていただき、種々の画像診断、運動症状、認知機能、精神症状などについての細かな評価を行います。
その結果をもとに運動障害ユニットの会議で個々の患者さんについての適応判定を行います。
その結果DBSの良い適応である(良くなる見込みが高い)と判断した場合にはDBSをお勧めしますし、そうでない場合にはその他の治療オプションを提案します。

その結果DBSを行うことになれば、手術日を決めて改めて脳神経外科に入院予約をしていただきます。
通常は手術日の2~3日前に入院していただきDBS植え込み手術を行います。

術後は翌日からほぼ術前と同じように動いたり食事をすることができるようになります。
実際の刺激は術後1週間程度で脳神経内科医により開始されます。
徐々に刺激を増強しながら薬を減量するような調整を2週間くらいかけて行い退院となります。
手術にあたっての入院期間は通常4週間程度です。

DBSを導入すると、薬とDBSと作用機序の異なる2通りの治療手段を使えるようになります。
これらをうまく組み合わせてさらに長期的な症状の進行に備えることができるので刺激・薬剤調整は非常に重要で、退院後も定期的な外来通院が必要になります。

順天堂では原則的に同一の医師により刺激と内服薬の調整を行うようにしています。
DBS装置は体内に埋め込まれているので入浴などで特に気を使うことはなくほぼ普通の日常生活が送れます。
電池式の装置を使用している患者さんではいずれ装置の交換が必要になります。
刺激の条件にもよりますが、パーキンソン病の場合1日24時間使用で電池寿命は3~5年です。
電池が切れてしまう前に交換のために前胸部の刺激装置植え込み部の小手術(局所麻酔で20分程度)を行う必要があります。




DBS担当医師紹介

下 泰司(脳神経内科)
2006年に順天堂でDBSを立ち上げ、チームリーダーとして順天堂でのDBS治療を牽引。現在は順天堂練馬病院でDBS治療を行う。

梅村 淳(脳神経外科)
2002年に米国ペンシルベニア大学でDBSを修得し、2003年より名古屋市立大学でDBSを開始した。その後2012年に順天堂へ移籍。これまでに800例以上のDBS手術経験を有する。

大山 彦光(脳神経内科)
2006年にDBSチーム立ち上げからDBS治療に関与し、2009-2011年に米国フロリダ大学でDBSならびにそのチーム医療を学び、順天堂でDBS治療に従事。現在は順天堂医院でDBSチームリーダーとして活躍している。

岩室 宏一(脳神経外科)
都立神経病院、フランス、スペインでDBSについての研鑽を積み、2016年より順天堂へ移籍。DBSのみでなく、脊椎外科も得意としている。

伊藤 賢伸(精神科)
DBS候補患者さんの精神機能評価や術後の精神症状の治療に関与。

中島明日香(脳神経内科)
順天堂練馬病院でDBS治療に従事。

中村亮太(脳神経内科)
順天堂浦安病院でDBS治療に従事。

加茂晃(脳神経内科)
順天堂医院でDBS治療に従事。




DBS手術の実際

定位脳手術装置

この手術の成功の鍵は脳内の目的部位(ほとんどの場合、視床下核)に正確に電極を留置することです。
そのために手術では定位脳手術装置という特殊な器械を頭部に装着して行います。
MRIで正確な位置測定を行った上にさらに生理学的評価を行い目的部位に正確に電極を留置します。


手術計画ソフトウェア

最近は手術計画用のソフトウェアの利用により安全に精度の高い手術が行えるようになりました。
手術はけっして大手術というわけではなく、脳外科手術の中では最も手術侵襲は少ない手術だと言えます。
手術の大部分は局所麻酔で行われ、脳神経内科医により試験刺激により効果を確認しながら行います。
その後の前胸部への刺激発生装置の植え込みは全身麻酔で行います。

以下に順天堂でのおおまかな手術手順を示します。
手術時間は両側手術でもすべて含めて4時間程度です。




DBS手術の流れ(両側手術の場合)

08:30
手術室へ入室してフレーム装着
09:00
MRI撮影
09:30
左側の電極植込み(局所麻酔)
試験刺激による効果、副作用の確認
10:30
右側の電極植込み(局所麻酔)
試験刺激による効果、副作用の確認
11:30
全身麻酔下で刺激発生装置の植込み
12:15
手術終了



順天堂でのDBS治療実績